復職判定面談で確認する項目|診断書提出後の実務チェックリスト
結論
復職判定面談では、「症状がよくなったか」だけを確認するのではなく、次の三つを結び付けて評価します。
- 現在の病状と治療の安定性
- 実際の職場で必要となる業務遂行能力
- 会社で実施可能な配慮とフォロー体制
「復職可」と記載された診断書は重要な資料ですが、診断書だけで復職判断を完了させることは適切ではありません。
厚生労働省の手引きでは、主治医の復職可能という判断の後に、情報収集と評価、職場復帰支援プランの作成、事業者による最終的な復職決定、復職後のフォローアップという段階が示されています。主治医の判断が日常生活上の回復を中心としており、職場で求められる業務遂行能力の回復と必ずしも一致しないことも明記されています。
復職判定面談は、本人を問い詰めたり、復職を断念させたりするための面談ではありません。本人の現在の状態と実際の仕事を結び付け、安全かつ継続的な復職条件を具体化するための面談です。
この記事の対象
この記事は、次のような人事労務担当者、経営者、産業保健担当者を対象としています。
- 復職可の診断書を受け取ったが、次に何を確認すべきか分からない
- 産業医面談の質問項目を標準化したい
- 面談担当者によって確認内容が変わっている
- 短時間勤務、残業制限、在宅勤務等の条件を決められない
- 復職後の再休職や勤怠不安定を減らしたい
- 管理職に何を伝えるべきか分からない
- 主治医意見と職場実態にずれがある
よくある誤解
誤解1 症状がなくなれば、復職可能である
症状が軽快していても、通勤、長時間の集中、複数業務の同時処理、対人調整、責任ある判断が安定してできるとは限りません。
誤解2 一度通勤できれば、週5日勤務もできる
一度会社まで往復できることと、決まった時刻に起床し、週5日通勤し、勤務後に回復して翌日も出勤できることは別です。
単発の実績ではなく、一定期間継続できるかを確認します。
誤解3 本人が「大丈夫」と言えば十分である
本人の自己評価は重要ですが、診断書、生活状況、通勤、休職前の勤怠、実際の業務、会社の配慮可能範囲を合わせて確認します。
誤解4 復職判定面談で会社の最終決定まで行う
産業医面談では、産業保健上の評価と就業上の措置に関する意見を提出します。
会社は、その意見、就業規則、業務上の必要性、職場の受入体制などを踏まえて復職について最終的な決定を下します。
誤解5 共通の点数表で復職可否を決められる
確認項目を標準化することは有効ですが、すべての職種、疾患、休職期間に共通する合格点はありません。
同じ状態でも、定型事務と車両運転、一般職と管理職、在宅勤務と対面顧客業務では必要な能力が異なります。
実務手順
手順1 面談前に会社側の資料を準備する
面談前に、次の資料を準備します。
- 主治医の診断書または意見書
- 休職開始日と休職期間
- 休職前の勤務時間、遅刻、欠勤、早退の状況
- 休職前の主な業務
- 休職前に生じていた業務上の問題
- 職務記述または担当業務一覧
- 通勤方法と所要時間
- 所定労働時間、シフト、繁忙期
- 残業、出張、夜勤、休日勤務の有無
- 会社で実施可能な配慮
- 過去に実施した配慮とその結果
- 就業規則上の復職手続き
- 復職後の受入部署と管理職
面談担当医に「診断書だけ」を渡すのではなく、実際の仕事に関する情報を提示します。
主治医の復職意見と実際の職務内容や受入条件が合わない場合は、「主治医の復職意見と職場実態が合わないときの対応」で、主治医への照会と情報のすり合わせ手順を解説しています。
手順2 面談の目的と情報の取扱いを本人に説明する
面談冒頭で、次の点を説明します。
- 面談は治療や診断を目的とするものではない
- 復職後の安全な勤務条件を検討するための面談である
- 面談結果のうち、会社には就業上必要な情報が伝えられる
- 診療上の詳細や私生活情報を無制限に会社へ伝えるものではない
- 最終的な復職決定は会社が行う
- 追加の主治医情報が必要な場合は、本人に説明して同意を得る
何が秘密として扱われ、何が会社への意見として共有されるかを、面談前に明確にします。
手順3 現在の症状と治療の安定性を確認する
産業医等の医療職が、必要に応じて次の事項を確認します。
- 現在残っている症状
- 症状の一日の中での変動
- 睡眠時間と睡眠の質
- 食欲、意欲、集中力
- 不安、焦燥、疲労感
- 通院頻度
- 治療継続の見通し
- 服薬状況
- 眠気、ふらつき、注意力低下等の副作用
- 症状悪化時の相談先
- 主治医から説明されている注意点
自傷他害など安全上の重大な懸念は、必要に応じて医療職が確認します。管理職や人事担当者が、医学的面談と同じ詳細さで症状を聞き出す必要はありません。
手順4 生活リズムと通勤の継続性を確認する
質問例は次のとおりです。
- 平日の起床時刻と就寝時刻は安定しているか
- 休日に昼夜逆転していないか
- 起床後、どの程度で活動を開始できるか
- 日中はどのように過ごしているか
- 一日を通して起きていられるか
- 読書、家事、外出等の活動をどの程度行っているか
- 所定始業時刻に間に合う時間に外出できるか
- 実際の通勤経路を使用したことがあるか
- 通勤後にどの程度疲労するか
- 翌日に疲労が残るか
- 週5日相当の生活リズムを一定期間継続できているか
「毎日何時間活動すれば合格」と一律に定めるのではなく、実際の勤務条件との対応を確認します。
手順5 業務遂行能力を具体的に確認する
「仕事ができそうですか」という質問だけでは不十分です。
実際の職務に対応させて、次の事項を確認します。
- 一定時間、文章や資料に集中できるか
- 会議の内容を理解し、必要な発言ができるか
- 指示を記憶し、順序立てて実行できるか
- 複数の案件を同時に管理できるか
- 締切を意識して作業できるか
- 判断に迷ったときに相談できるか
- ミスが生じたときに修正できるか
- 顧客や同僚とのやり取りに耐えられるか
- 苦情、対立、予期しない変更に対応できるか
- 勤務終了後に翌日の勤務に備えて回復できるか
- 休職前の役割に戻ることへの不安は何か
- 現時点で難しいと考えている業務は何か
本人の回答だけでなく、職務内容、主治医意見、休職前の経過と照合します。
手順6 休職に至った経緯と再発予防策を確認する
休職原因を本人だけの性格や対処能力に限定しないことが重要です。
次の観点を確認します。
- 症状悪化の前に、どのような変化があったか
- 業務量、役割、勤務時間に変化があったか
- 人間関係や指示系統に問題がなかったか
- 本人が初期の変化に気付けたか
- 今後、どのような変化を早期兆候として扱うか
- 兆候が出た際に、誰に相談するか
- 本人が行う対処
- 管理職が行う対応
- 人事・産業保健部門に再相談する基準
- 職場環境側で変更すべき事項
「本人がストレスに強くなる」ことだけを再発予防策にしないようにします。
手順7 希望する配慮と会社で可能な配慮を分ける
本人の希望を確認したうえで、会社で実施できるかを別途検討します。
確認項目は次のとおりです。
- 短時間勤務の希望
- 時差出勤
- 在宅勤務
- 残業制限
- 出張、夜勤、休日勤務の制限
- 担当業務の変更
- 顧客対応や苦情対応の除外
- 管理職業務の一時的な縮小
- 休憩場所や休憩方法
- 通院時間の確保
- 定期面談
- 指示方法や業務の見える化
本人の希望をその場で承認または否定せず、医学的必要性、業務上の実現可能性、代替案を確認します。
手順8 面談後の評価を四つに分類する
面談後の評価は、単純な「復職可」「復職不可」だけではなく、次の四つに分けて行います。
- 通常勤務での復職が可能
- 一時的な勤務制限・職場配慮を条件として復職可能
- 主治医情報、通勤実績、生活リズム等の追加確認後に再評価
- 現時点では復職準備が十分でなく、一定期間後に再面談
追加確認が必要な場合は、「何を」「いつまでに」確認するかを具体的にします。
手順9 復職支援プランを作成する
復職支援プランには、次の内容を記載します。
- 復職日
- 勤務日数と勤務時間
- 担当業務
- 一時的に外す業務
- 残業、出張、夜勤、休日勤務
- 在宅勤務の扱い
- 休憩方法
- 通院への配慮
- 本人の相談先
- 管理職の確認事項
- 初回フォロー面談日
- 配慮の再評価日
- 配慮解除の判断者
- 体調悪化時のエスカレーション基準
復職日は決まっているが支援プランが決まっていない、という状態を避けます。
復職支援プランに短時間勤務や残業制限を設定する具体的な方法は、「復職後の短時間勤務・残業制限の決め方」をご参照ください。
手順10 復職後のフォロー時期を決める
実務上は、少なくとも次の時期を検討します。
- 復職後1~2週間
- 復職後1か月
- 復職後2~3か月
- 勤務時間を延長する前
- 残業制限等を解除する前
- 勤怠または業務遂行に変化があったとき
フォロー面談では、症状だけでなく、遅刻・欠勤、業務の質、疲労の蓄積、職場配慮の実施状況、管理職側の負担を確認します。
チェックリスト
面談前
- 復職可の診断書を受領した
- 診断書に勤務制限と期間が記載されているか確認した
- 休職前の勤怠を整理した
- 実際の業務内容を整理した
- 通勤条件を確認した
- 会社で実施可能な配慮を確認した
- 面談目的と情報共有範囲を本人に説明した
面談時
- 症状と治療の安定性を確認した
- 睡眠・起床時刻を確認した
- 日中の活動状況を確認した
- 通勤の継続性を確認した
- 集中力、判断力、対人対応を確認した
- 休職に至った要因を確認した
- 再発の早期兆候を確認した
- 本人の希望する配慮を確認した
- 実際の業務との適合を確認した
- 主治医への追加照会の要否を確認した
面談後
- 面談結果を四つの区分で整理した
- 復職支援プランを作成した
- 本人に結果を説明した
- 管理職には必要最小限の情報を伝えた
- 初回フォロー面談日を決めた
- 配慮の再評価日を決めた
- 状態悪化時の連絡基準を決めた
注意点
面談項目を標準化しても、点数だけで機械的に復職可否を決めないでください。必要な能力は職務ごとに異なります。
在宅勤務は、通勤負荷を減らす一方で、生活リズムの確認が難しくなる、周囲が変化に気付きにくい、相談が遅れるなどの側面もあります。治療上の必要性と業務上の実現可能性を個別に検討します。
「試し出勤」「リハビリ出勤」などを実施する場合は、それが労務提供に該当するか、賃金、労災、指揮命令、休職期間との関係を事前に確認します。名称だけで無給の就労を行わせないよう、就業規則と専門家の助言を確認してください。
健康情報は、関係者全員で共有するものではありません。管理職には、配慮の実施に必要な情報を中心に伝えます。
公的資料・参考文献
- 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
- 厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のための主治医向けマニュアル」
- 厚生労働省「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」
- 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」
この記事を執筆した医師

井上 かな
Inovia Medica合同会社 代表社員・医師
精神科専門医・指導医/精神保健指定医
日本医師会認定産業医/公認心理師/博士(医学)
2009年、浜松医科大学医学部医学科卒業。2011年から精神科診療に従事し、大学病院、県立精神科病院、単科精神科病院等で臨床・教育・研究を経験。2024年から嘱託産業医として、企業・教育機関等の産業保健業務に携わっています。精神科臨床と産業医実務の双方の経験に基づき、企業のメンタル不調者対応、休職・復職、職場配慮に関する記事を執筆しています。
記事内容の最終確認日:2026年6月21日
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